こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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日本人が知らない高度な日本の宇宙開発技術力で 宇宙旅行は徐々に身近になってきているんです。

「月に行こうか、火星に行くか」。身近になる宇宙旅行

元・国際宇宙連盟会長 宙の会主宰

五代 富文 氏

ごだい とみふみ

五代 富文

ごだい とみふみ 1932年、東京生れ。東京大学工学部卒業、カリフォルニア工科大学大学院卒業。工学博士。富士精密工業−梶A航空宇宙技術研究所でロケット設計・研究・開発に従事。その後、宇宙開発事業団に転じ、H-−Uロケット開発を主導、大型国産ロケット路線を確立した。また、国際宇宙連盟(IAF)会長のほか、米航空宇宙学会(AIAA)理事を務めるなど国際的にも活躍。元宇宙開発事業団副理事長、前宇宙開発委員会委員。現在は宇宙政策シンクタンク「宙の会」を主宰している。近著に『日中宇宙戦争』(文芸春秋)、『ロケット開発・失敗の条件』(ベストセラーズ)、『国産ロケットH-−U・宇宙への挑戦』(徳間書店)、『月に行こうか、火星に行くか』(丸善)などがある。"

2006年10月号掲載


世界有数の技術をもつ日本。 しかし、出遅れている理由は・・・

──一方、日本は高度な技術があるにも関わらず、こと宇宙に関しては出遅れている感があるのは否めません・・・。何だかはがゆいですね。それに国民的関心も今一つのような気がしますし…。ところで、日本の宇宙関係の予算はどうなっているのでしょうか?

五代 これが…。例えばアメリカでは、NASAと国防総省からそれぞれ予算が出ていまして、合せると日本の30倍近い。ヨーロッパにしても、EUで共同開発をして、各国でもそれぞれ予算を立てて研究をしている、という状況です。

しかし、日本は宇宙に関する相当な科学技術を持っているにも関わらず、俗にいう縦割りで、予算に関しても各省庁の枠組を超えては出ません。宇宙に関する総合政策がないためです。

──縦割り、ですか。

五代 はい、残念ながら…。宇宙に関する、科学技術、産業、安全保障といったことを鑑みるには、枠組を超えた国家的な大政策が必要です。私は、とにかく戦略的な宇宙政策を立てて、横断的に連携することで、日本の宇宙開発・利用の将来像と宇宙産業のあるべき姿をまず決める必要があるのでは、と考えています。

現在、自民党の宇宙開発特別委員会で宇宙の法制・体制整備のための宇宙基本法策定の検討が進んでおり、おそらく次の国会で宇宙基本法が提出されると思います。

これでゆくゆくは日本の宇宙開発が、世界からも、そして一般の市民の方からも見直され、関心を持ってもらえるようになればいいのですが…。

──日本には宇宙で通用する科学技術が相当あるのに、政策がないがために技術のための技術開発になってしまうのはもったいないことですね。宇宙産業を支える高い技術力で、日本が発展するといいですね。


近著紹介
『月に行こうか、火星に行くか』(丸善)
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