こだわりアカデミー
日本人が知らない高度な日本の宇宙開発技術力で 宇宙旅行は徐々に身近になってきているんです。
「月に行こうか、火星に行くか」。身近になる宇宙旅行
元・国際宇宙連盟会長 宙の会主宰
五代 富文 氏
ごだい とみふみ
ごだい とみふみ 1932年、東京生れ。東京大学工学部卒業、カリフォルニア工科大学大学院卒業。工学博士。富士精密工業−梶A航空宇宙技術研究所でロケット設計・研究・開発に従事。その後、宇宙開発事業団に転じ、H-−Uロケット開発を主導、大型国産ロケット路線を確立した。また、国際宇宙連盟(IAF)会長のほか、米航空宇宙学会(AIAA)理事を務めるなど国際的にも活躍。元宇宙開発事業団副理事長、前宇宙開発委員会委員。現在は宇宙政策シンクタンク「宙の会」を主宰している。近著に『日中宇宙戦争』(文芸春秋)、『ロケット開発・失敗の条件』(ベストセラーズ)、『国産ロケットH-−U・宇宙への挑戦』(徳間書店)、『月に行こうか、火星に行くか』(丸善)などがある。"
2006年10月号掲載
月にはいろいろな可能性が。いずれは宇宙への拠点に?
──月探査の主たる目的はどういったことなのでしょうか?
五代 「月の起源と進化を探る」という科学的意義はもちろんですが、それ以外にも簡単にいえば、今後どのように「月を利用できるか」を調べるという目的もあります。月面基地をどこに建設するか、利用できる鉱物資源はどこにあるかなど、月開発にあたって基本的な課題を解決できるよう下地を作れればと思っています。具体的には地球から見えない月の裏側を観測したり、月面下の氷を見付けたり、鉱物資源の分布を求める、月面の立体地図を作るといったことです。
──ということは、月にある鉱物や元素、プラズマや電磁場なども調べたりするのですか?
月周回衛生SELENE(セレーネ)はアポロ計画以来の本格的な月探査機で、月上空から月全面を観察する。お茶の間のハイビジョンでは月周遊飛行や、青白い地球の姿も楽しめそうだ<出典:NASA> |
五代 その通りです。地形や表面付近の地下構造、磁気異常、重力場の観測のほか、周回衛星に搭載した観測機器で、高エネルギー粒子など月周辺の環境計測も行なう予定です。
月面にはヘリウム3という物質が多くあることがすでに分っています。ヘリウム3は核融合の材料になる物質で、これは将来、重要なエネルギー資源になると期待されています。また、真空の月に天文台を設置すれば、それはそれは素晴らしいものになるでしょうね。月のクレーター底面には、電波も来ず、環境が安定していますからね。このように、月はさまざまな実用化が可能視されているんです。
──宇宙へ向かう前進基地としても利用ができそうですね。
五代 そうですね。アメリカは、火星へ行く前段階として、月に基地を作って、人が住んで・・・、といった計画もスタートさせました。
──もうそんなところまで・・・。
『月に行こうか、火星に行くか』(丸善) |
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