こだわりアカデミー
ウィルスや細菌等を退治するための免疫反応が 場違いなところで過剰に起こるのがアレルギーなんです。
アレルギーのメカニズム
東京医科歯科大学医学部教授
矢田 純一 氏
やた じゅんいち
1934東京生まれ。59年東京大学医学部卒業。専攻は臨床免疫学、小児科学。著書に「免疫−−からだを護る不思議なしくみ」(87年、東京化学同人)、「初学者のための免疫学問答」(92年、中外医学社)、「リンパ球の免疫生物学」(93年、同)、「アレルギー」(94年、岩波新書−写真)がある。
1995年7月号掲載
予防の基本は、アレルゲンを身体に入れないこと
──アレルギーにならないための予防法というのはあるんでしょうか。
矢田 基本的には、アレルゲンが身体に入ってこないようにすることです。単純に言えば、スギ花粉アレルギーの人はスギ花粉を身体に入れない、特定の食物でじんま疹が出る人はそれを食べない、ということになります。ですからアレルギー症状の出ている人は、早めにその原因を見つけて、それを防ぐ努力をするということです。
──まずアレルゲンを見つけることですね。
矢田 季節と関係なくくしゃみや鼻水の発作が出たり、喘息を起こしたりしている人は、家のほこりやダニ、あるいはペットの毛やフケが原因になっている場合があります。家にいる時はなんともないのに職場に行くと症状が出るという人がいますが、これは職場で扱っているものがアレルゲンになっている可能性があります。こういう状況分析だけでは不確実な場合は、皮膚検査、血液検査、さらには実際にアレルゲンを体内に入れての誘発テスト等の方法もあります。
ただ、アレルゲンの侵入とは全く関係なくアレルギーと同じ症状を起こす人もいるんです。
例えば、排気ガスの刺激で喘息の発作を起こす、冷たい空気に触れただけで鼻水が出、くしゃみを繰り返す、お風呂に入るとじんま疹が出る、さらにはいやな上役と顔を合わせると喘息の発作が起きてしまうという人までいます(笑)。もっと言えば、アレルギー症状を起こしている人が、そのうち他の原因でも同じ症状が出やすくなってしまうということがあります。こういったケースは、免疫反応という考え方だけでは説明できません。
──治療法については研究が進んでいるんでしょうか。
矢田 免疫学の進歩によって、アレルギーについてもかなりいろいろなことが分かってきていますが、単にアレルゲンの侵入と発病という関係では説明できない部分もあり、治療法に関してはまだ十分とはいきません。また、大気汚染、食品添加物、精神的ストレスのもとになる社会環境をどうするか等、医学だけでは解決できない問題も多く関与していますから、まだまだ難しい分野ですね。
──行政、企業をはじめ、社会全体が取り組まなくてはならない問題ですね。勉強になりました。ありがとうございました。
2000年4月より実践女子大学に転属(学部および学科は生活科学部食生活学科)。
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