こだわりアカデミー
「方言コスプレ」とは、方言を用いた 『ことばのコスチューム・プレー』のことです。
現代社会のコミュニケーションツール「方言コスプレ」
日本大学文理学部国文学科教授
田中 ゆかり 氏
たなか ゆかり
1964年神奈川県生まれ。87年早稲田大学第一文学部日本文学専修卒業後、約3年間、読売新聞社に記者職として勤務。96年早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。早稲田大学文学部助手、日本学術振興会特別研究員(PD)、静岡県立大学国際関係学部専任講師などを経て、2006年から現職。専門は、日本語学(方言・社会言語学)。現代日本語社会で生ずるさまざまな「ことば」に関わる現象を足場として、社会や都市の成り立ち・行く末、そこで暮らす人々の意義や実態を捉えることができれば、と考えている。著書は、『「方言コスプレ」の時代―ニセ関西弁から龍馬語まで』(岩波書店、2011)、『首都圏における言語動態の研究』(笠間書院、2010)など。
2012年9月号掲載
田中 はい。若い世代は、そういった「方言」を取り入れて、親密な間柄やくだけた場面において、自分の気持ちを柔らかく伝える手段の一つとしているのです。
──そういうことだったんですか。「方言コスプレ」は、ポジティブなコミュニケーションツールとして使われ始めたということですね。
田中 それと、インターネットの発達によって、携帯メールやブログ、SNSがたくさん使われるようになったことも、「方言コスプレ」が加速度的に広まった理由の一つと考えられます。
「メディア」「若さ」「女性」が「方言コスプレ」のキーワード
──そういえば、携帯メールの「絵文字」や「デコメール」なども、まさにデジタル上でのコスプレといえるのでは?
田中 そうなんです。でも実は、この現象は昔からあったんですよ。
──え? どういうことでしょう。
田中 以前から小・中学生の女子の間では、授業中にこっそり「回し手紙」をやるのが流行っていて、その手紙をいかにかわいく、カラフルに書くかを面白がっています。これも、ある種の「コスプレ」といえます。
2010年8月、山形県三川町でのフィールドワークの様子。町民との交流会も行った〈写真提供:田中ゆかり氏〉 |
──なるほど。「ことばのコスプレ」は昔からあったんですか。人ってみんな、「コスプレ」が好きなんですね。
田中 そのようです。だから、「方言コスプレ」は今や当たり前に広く使われるようになってきたのでしょう。方言を、意味に従った漢字仮名混じり文に変換するソフトも出てきているほどなんですよ。
──そうなんですか。「方言コスプレ」はしっかり認知されたといえますね。
『「方言コスプレ」の時代―ニセ関西弁から龍馬語まで』(岩波書店) |
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