こだわりアカデミー
イグ・ノーベル賞を受賞したのも、数々の発明品を生み出 せたのも、私がしつこい性格だからだと思います(笑)。
年間100冊以上ものノートから生み出されるさまざまな発明品
金沢大学大学院特任教授
廣瀬 幸雄 氏
ひろせ ゆきお
1940年石川県金沢市生れ。63年金沢大学理学部物理学科卒業。同大学院理学研究科修了後、86年金沢大学理学部教授となり、学生部長(副学長相当)、共同研究センター長、ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー長などを歴任。06年に金沢大学退官後は、名誉教授、大学院特任教授となり現在に至る。工学博士。専門は破壊工学。日本コーヒー文化学会副会長。03年には鳥撃退の合金を開発したことでイグ・ノーベル賞を受賞。09年には超音波計測による骨密度評価法の開発育成で文部科学大臣表彰科学技術賞を受賞。著書に『基礎材料工学』(日新出版)、『中小企業の生き残り戦略』(同時代社)、『もっと知りたいコーヒー学』(旭屋出版)、『工学屋が見たコーヒーの世界』(いなほ書房)、『我が輩は珈琲博士』(時鐘舎)など多数。
2012年3月号掲載
廣瀬 大学生の時、石川県の兼六園にある日本武尊の銅像にハトの糞が一切付いていないことに「なぜだろう?何か理由があるのでは」と疑問を抱きました。上野にある西郷隆盛の銅像なんて糞だらけですよね。
その後、私が大学教授になってから、その銅像を改修する委員に選ばれまして…。金属疲労を専門にしていたこともあったのですが、まさに願ってもないことで、さっそく調べてみたところ、他の銅像と比べて「ヒ素」の含有量が多いことが分ったのです。おそらく、ハトはヒ素と鉛から発生する電磁波を嫌がっていたのでしょう。
廣瀬氏がイグ・ノーベル賞を受賞した研究の対象となった、兼六園の日本武尊の銅像。現在は改修されている<写真提供:石川県> |
──実用化すれば、鳥害で悩む人達にとって大変な発明品になりますね。
廣瀬 ただ、ヒ素と鉛を扱うのには危険が伴います。真空状態での精錬が必要で、昔はこの技術がないために何人もの人が亡くなったはず。すぐに実用化するのは難しいですね。
──なるほど…。とはいうものの、まさに疑問をしつこく追い続けた研究の成果といえますね。
廣瀬 しつこく疑問を持ち続けた例は他にもあるんですよ。
私は小学生の時に肥溜めに落ちた経験があるんです。その時に疑問に思ったのが、肥溜めがまったく臭くなかったことです。「なぜ?どうして?」と考え続け、後になってバクテリアが臭いの元を食べるせいだと分りました。それで臭いを消す液体なども発明しましたよ。
──それも、数十年掛かりで「どうしてだろう?」という疑問を持ち続けて謎を突き止めたわけですね。先生の「しつこさ」には感服します(笑)。
廣瀬 同じことばかり言っているから、若い時は『トロ松』なんて呼ばれてバカにされましたけどね(笑)。
「なぜ?」を考え続け、
記したノートは年間100冊以上!
──先程、発明の原動力の一つに「何かの役に立たないかな」と考えることをあげておられましたね。
サイト内検索