こだわりアカデミー
江戸時代の歌舞伎は、庶民文化としても大流行。 役者に合せてストーリーも変っていたんです。
近松は「日本のシェークスピア」
文学者・元歌舞伎学会会長 早稲田大学文学部教授 早稲田大学坪内博士記念演劇博物館館長
鳥越 文蔵 氏
とりごえ ぶんぞう
1928年長崎県生れ。55年早稲田大学文学部演劇科卒業。58年同大学院修士課程修了。69年同大学文学部助教授を経て、74年教授に。早稲田大学坪内博士記念演劇博物館館長も務める。87年には、演者・評論家・研究者・愛好家によって結成された歌舞伎学会の会長に就任。主な著書に『近松門左衛門集』(75年、小学館)、『近松門左衛門』(89年、新典社)、共著に『義太夫年表 近世編』(79年、八木書店)など多数。
1999年3月号掲載
役者絵を4万6,000枚所蔵する「演劇博物館」
──ところで、先生が館長を務められている『早稲田大学坪内博士記念演劇博物館』が創立70周年を迎えられたそうですね。
1999年4月1日まで行なわれいた『中村歌右衛門展』。五世歌右衛門が使用していた鏡台(写真上)と衣装類(写真下) |
鳥越 はい。これを機に館内のリニューアルを行ない、名品を飾る部屋を開設したんです。この部屋を開くに当っては、当博物館創設者である坪内逍遙が、五世中村歌右衛門と縁が深いこともあって、六世中村歌右衛門から多大なご協力をいただきました。そこで、名前を冠して『六世中村歌右衛門記念特別展示室』としました。今その部屋では、開室記念として『中村歌右衛門展』を4月1日まで開催しており、五代目が「歌右衛門」を襲名した時にあつらえた鏡台など、貴重な品を展示しています。
──歌舞伎のお好きな方には、本当にたまらない逸品が展示してありますね。他には、どういったものが所蔵されているんですか。
鳥越 能や浄瑠璃など、日本演劇に関するものがいろいろありますが、やはり坪内逍遙が歌舞伎に力を入れていたので、歌舞伎関係のものが一番多いですね。六代目尾上菊五郎に関するもの一式や、江戸時代の歌舞伎の絵が描いてある役者絵も4万6000枚所蔵しています。
──4万6000枚とは、大変な数ですね。
鳥越 所蔵数としては世界一なんです。しかし、江戸時代にあったものの6割くらいは、外国で保存されているようです。
日本の伝統演劇に関する貴重な資料が多いということもあって、当博物館には海外からも多くの留学生が学びに来ます。いわば、研究者にとっては、日本伝統演劇を学ぶメッカになっているんです。
私の希望としては、研究者だけでなく、今後の日本伝統演劇を担っていく人達にとってもメッカであってほしいですし、ここへ来た方が歌舞伎にもっと興味を持ってくれて、「歌舞伎座へ行こう」というようになってもらいたいですね。
──これからも、歌舞伎を始め日本の伝統芸能を、先生のご研究および多方面から支えていっていただきたいですね。
本日はありがとうございました。
1982年にロンドンのフォーチュン座を模して建てられた演劇博物館(写真上)と、その館内に展示されている江戸時代の役者絵(写真右) |
早稲田大学坪内博士記念演劇博物館 |
※鳥越文蔵先生は、2021年4月5日にご永眠されました。生前のご厚意に感謝するとともに、慎んでご冥福をお祈り申し上げます(編集部)
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