こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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クマの行動・繁殖を追跡調査。 冬眠・出産など 独自の生態が明らかに!

クマと出会ったらどうする?

北海道大学獣医学研究院教授

坪田 敏男 氏

つぼた としお

坪田 敏男

1961年大阪府出身。83年北海道大学獣医学部卒業、88年北海道大学大学院獣医学研究科博士課程修了。91〜93年イリノイ大学(アメリカ合衆国)にアメリカクロクマの冬眠・繁殖研究のため留学。95年岐阜大学農学部助教授。2003年同大学教授。04年同大学応用生物科学部教授。07年北海道大学大学院獣医学研究科(現在、研究院)教授。

2017年10月号掲載


九州のクマは絶滅。行政と連携で保全・管理を

──今後のご研究の展開は?

坪田 まだまだ分かっていないことも多いので、「繁殖」や「冬眠」を中心に、クマの生態を解き明かしていきたいです。同時に、保全や管理にも力を入れていきたいと考えています。クマは、分布域の拡大とともに、全体的に見れば生息数が増加しているのですが、一方で大規模な森林開発などの影響により、絶滅が危惧されている地域もあるんです。

──そういえば、九州にはいないと聞いたことがあります。

坪田 はい、残念ながらツキノワグマは九州では絶滅したと推測されます。四国でも今、おそらく高知に30頭程度しかいないとみられ、まさに絶滅の危機に瀕しています。私はクマの研究仲間と共に、クマと人間の共存を目指すNGO「日本クマネットワーク」で活動しているのですが、そのNGOで今後3年間、四国のツキノワグマの生態を調査し、保全活動を行う予定です。また行政にも管理・保全面で働きかけていきます。欧米などでは、環境省が各州レベルで野生動物の生態に詳しい専門家を配置し、個体数の保全・管理をしていますが、日本はそうした面でまだまだ遅れをとっています。少しでも欧米レベルに近づけていければと考えています。

──生態系や環境の保全という観点から見れば人間と野生動物との共存は必須だと思います。クマの生態の謎の解明も含め、先生の今後の調査・研究、ご活躍に大いに期待しております。

麻酔がかかったツキノワグマと坪田氏〈写真提供:坪田敏男氏〉


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「世界のクマ研究最前線|クマが生きられる環境を未来に残したい」

坪田先生は現在、「世界のクマ研究最前線|クマが生きられる環境を未来に残したい」というテーマでクラウドファンディングを実施されています。一般に知られていないクマの現状や、クマの生態・生理を周知すること、クマ類の保全に向けた研究を前に推し進める資金を募ることを目指した活動です。

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