こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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世界初!地球内部の未知の鉱物を発見。 地球環境の歴史を解明することで、 生命誕生の謎に迫る

生命起源のカギを地球の構造から探る

東京工業大学地球生命研究所所長・教授

廣瀬 敬 氏

ひろせ けい

廣瀬 敬

1968年福島県生まれ。90年東京大学理学部地学科卒、94年東京大学大学院博士課程修了後、東京工業大学理学部地球惑星科学科助手。96年米カーネギー地球物理学研究所客員研究員、99年東京工業大学院理工学研究科地球惑星科学専攻助教授、2006年同大学院同研究科教授に就任。12年より現職の文部科学省世界トップレベル国際研究拠点である東京工業大学地球生命研究所の所長に就任。高圧地球科学者。07年日本IBM科学賞、11年日本学士院賞を受賞。著書『できたての地球――生命誕生の条件』(岩波書店)。

2015年7月号掲載


地球のコアに水素が存在?海や生命発生の重要なカギに

──ところで、先生が所長を務めておられる、「地球生命研究所」は、名称に『生命』という言葉が入っています。地球内部を探ることは生命の研究とも関連があるのですか?

廣瀬 はい、大いに関係があります。私たちの研究所は「地球の生命はいったいどういう環境で誕生したのか」が主要なテーマです。地球内部を細かく調べることで、地球の誕生や生い立ちの歴史を解明していくことは、当然、生命の起源とも大きな関わりがあるはずです。生命起源の研究は古くからさまざまありますが、地球の当時の環境も考えて研究している研究者はこれまでほとんどいなかった。そこでこの「地球生命研究所」では、世界各地のさまざまな研究者とネットワークをつくって、新しい視点で地球生命誕生の謎を探っています。

──生命誕生には水が必要だと聞いています。いつから水が存在したかなどは大きく関係してきそうですよね。

廣瀬 はい、水や海がいつ、どこで発生したか、どんな状態だったかなどはとても重要と考えます。例えば海の塩の濃度だって40億年ずっと同じだったはずはなく、昔はもっと塩辛かったのではないか。そうした環境を照らし合わせて研究することは、生命起源解明への重要なカギになると信じています。水の発生といえば、最近、実は、コアに水素が入っていたのではないかとにらんでいます。というのもコアは主に鉄の固まりですが、密度が純鉄よりかなり軽く、鉄より軽い酸素や炭素などが20%程度は含まれると推測できます。これが水素だった場合は、水がたくさんあったことになりますから、海や陸地の発生とも何らかの関わりがあるのではないか、そして、このことが生命起源に大きく関係してくるのではないかと…。

──その謎が解明されれば、また世界を驚かせる大発見につながりますね。ぜひ、大きな成果を期待しています。本日はどうもありがとうございました。


近著紹介
『できたての地球―生命誕生の条件』(岩波書店)
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