こだわりアカデミー
本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
結晶の成長の仕組みを解明することで 医学などさまざまな分野への応用が期待できます。
結晶成長学からのアプローチで解明される不凍タンパク質
北海道大学低温科学研究所助教授
古川 義純 氏
ふるかわ よしのり
1951年、滋賀県生れ。78年北海道大学大学院理学研究科博士課程修了。理学博士。同年北海道大学低温科学研究所助手に就任し、90年より現職。主な研究分野は氷物理、結晶成長、生物物理、マイクログラビティ。中谷宇吉郎の弟子のひとり、故・小林禎作教授とともに雪の結晶の研究を行なうなどした。現在は国際宇宙ステーションによる宇宙実験プロジェクトを推進中。共著に『雪と氷の事典』『形の科学百科事典』(ともに朝倉書店)、『雪花譜』(講談社カルチャーブックス)など多数。
2006年12月号掲載
癌を凍らせれば摘出手術が安全に?
──「不凍タンパク質」はどのような利用方法が考えられているのですか?
古川 現在、大変注目されている物質で、特に医学目的で有効といわれているんですよ。
──例えば?
古川 癌などの手術の際に、摘出部位を凍らせ、摘出部位の回りの正常な細胞には不凍タンパク質を注入するなどして凍らないようにする。癌の部位だけ凍らせようとしても、通常は周囲の正常な細胞まで凍ってしまい、その部分の細胞は破壊されてしまいますが、不凍タンパク質を利用し正常な部分を凍らないようにすることで、より安全な手術が可能になります。
また、化粧品として、クリームなどに不凍タンパク質を入れると、凍傷を防止する効果があるでしょう。
食品なども、凍らせておくと結晶の粒が大きくなり、味が落ちるといわれていますが、不凍タンパク質を入れることにより味が落ちないようにすることができます。
このように、いろいろな応用が考えられていますが、まあ、われわれはあくまでそういった応用ではなく、結晶の成長を解明するための基礎研究をひたすらやっているわけですが…。
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