こだわりアカデミー
火山灰などを活用して、 水質浄化や、磯焼け現象の改善に取り組んでいます。
火山灰で自然環境を改善
宇部フロンティア大学教授 学校法人香川学園宇部環境技術センター所長
臼井 惠次 氏
うすい けいじ

1953年生れ。鳥取大学大学院博士後期課程修了。The University of Manitoba(Canada)招聘客員研究員、宇部フロンティア大学附属地域研究所教授、学校法人香川学園理事を経て現職。専門分野は環境社会学、環境化学。環境保全活動の動向研究や、火山灰やフライアッシュを利用した水質浄化剤の開発を行なっている。NPO法人環境共生機構理事長、エコアクション21審査人。その他、山口県環境影響評価技術審査委員、やまぐちエコ市場オフセット・クレジット審査会会長、山口県エコキャンパス取組促進協議会会長、�監�本環境測定分析協会中四国支部運営委員、宇部市地球温暖化対策ネットワーク低炭素まちづくり協議会委員等を務めている。
2011年4月号掲載
臼井 ええ。例えば屋久島では、広葉樹林帯の伐採をしてからというもの、土壌から沿岸に栄養分が行かなくなり、海藻がなくなる現象が起きています。近くには黒潮も流れていますが、実は、黒潮自体に栄養分は全くないため、魚が寄り付かなくなってしまいました。
──早急な対策が必要ですね。
それにしても、新素材はどのようにして作るのですか?
臼井 火山灰を特殊な接着剤で固めることによって、人体に害がなく、栄養素を上手く吸着する素材を作ることができます。
──フライアッシュも同じような方法で作るのですか?
臼井 フライアッシュ自体は多孔質体ではないため、火山灰とは少し異なる技術で吸着できるものにしました。
それは、接着剤自体を網目構造にして多孔質体にするというものです。フライアッシュは、小さな丸いガラス玉状の微粒子の集まりです。網目にくっつくと、ガラス玉と網目の間に隙間ができ、そこに有機物が吸着します。
この技術によって、フライアッシュも火山灰と同じように利用できることが分りました。
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| 開発された多孔質素材。右がフライアッシュ、左が火山灰を基材としたもの<写真提供:臼井惠次氏> |
都市河川の豊富な栄養分を磯焼けの海域へ
──それにしても、水質浄化の研究には、バイオ技術などさまざまなものがありますが、先生はなぜ火山灰やフライアッシュに着目されたのですか?
臼井 私はもともと理学部出身なのですが、理論ばかりでなく、やはりもの作りがしたいと考え、農学部に進みました。そこで、湖をきれいにする研究などを始めましたが、近年、地球温暖化による海水温の上昇などから、磯焼け現象が多く見られるようになったことを知り、日本の漁業の将来を危惧していました。
──確かに、このままでは水産由来の食料危機にもつながってしまいます。
臼井 そういった現象は一度起きると、回復するのにどのくらい年月が掛かるのか分りません。日本全国で毎年、甲子園球場の約10倍の面積の海域で、磯焼け現象が広がっています。
──そんなに被害が出ているのですか。水産物の宝庫といわれる日本ですが、衰退してしまうかもしれませんね。
臼井 農林水産省では数年前から警告を出していますが、なんら対策ができておらず、漁業に大きな打撃を与えています。
こうした問題の解決に少しでも力になりたいと、現在の研究に至ったわけです。
磯焼け現象が広がる一方で、都市の河川は、逆にたくさんの有機物によって汚れている。全体的にバランスが崩れています。そこで、媒介となる新素材を開発できれば、都市で余っている栄養分を、磯焼け現象が起きている海域で活用することで問題解決にならないかと考えたのです。
──実現できれば、廃棄物の有効利用や、川などの水質浄化、磯焼け現象の改善という、『一石三鳥』の役割を果たすことになる!
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