こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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これからは、太陽電池の時代。 環境のためにも電気自動車の普及が重要になります。

環境にやさしい時速370kmの電気自動車「エリーカ」

慶應義塾大学環境情報学部教授

清水 浩 氏

しみず ひろし

清水 浩

1947年、宮城県生れ。東北大学工学部博士課程修了。76年、国立環境研究所(旧国立公害研究所)入所。82年、アメリカ・コロラド州立大学留学。その後、国立公害研究所地域計画研究室長、国立環境研究所地域環境研究グループ総合研究官を経て、現在、慶應義塾大学環境情報学部教授。環境問題の解析と対策技術についての研究(電気自動車開発、環境技術データベース開発)に従事。国立環境研究所時代から電気自動車の研究開発を始め、27年間で7台の試作車開発に携わり、2004年、「Eliica(エリーカ)」の実現に至る。現在、「エリーカ」市販に向けて研究を進めている。著書に『電気自動車のすべて』(日刊工業新聞社)、『温暖化防止のために 一科学者からアル・ゴア氏への提言』(ランダムハウス講談社)他。

2008年7月号掲載


 


清水 室内を広くするためには、タイヤをコンパクトにしたかったんです。でも、単純に小さくしただけでは、乗り心地が悪くなりますし、加重に耐えられなくなる。それなら、車輪を2つに分割し、大きなタイヤ1個分の役割を果たせばいいと考えました。そこで、電車の車両のように、台車構造(集積台車)を採用したのです。

「エリーカ」の車内。バッテリーが床下にあることで、フラットな空間を実現<写真提供:清水 浩氏>
「エリーカ」の車内。バッテリーが床下にあることで、フラットな空間を実現<写真提供:清水 浩氏>


──なるほど、8輪にすることによって、発生する振動を抑え、走行の安定性や乗り心地を確保しているのですね。


清水 また、駆動輪を多くすることによって高加速化も容易になり、さらに、床下にバッテリーを敷きつめたフラットな構造によって安定度も増し、車内の利用可能な空間が広がりました。

──こうして考えると、車というのは4輪付いているのが常識でしたが、実は8輪の方が本質なのかもしれませんね。


清水 エリーカの開発によって、それが証明されつつあるわけです。

 

先端技術が登場して実現化


──それにしても、電気自動車の開発の歴史は古く、意外にも100年以上前から研究が進められているそうですね。

清水 発想自体は前からあったのですが、いくつかの問題があり、実用化できませんでした。

──その問題というのは?

清水 一つに、高性能の電池とモーターが開発されていなかったことです。20世紀末にようやく新しい技術が生れ、実現化に至りました。

──開発された技術とは、具体的にはどういったものでしょう。

清水 代表的なものとして、「リチウムイオン電池」「ネオジウム鉄磁石」「トランジスタ」の3つが挙げられます。いずれも、日本を中心に開発されている先端技術なんですよ。

リチウムイオン電池は、充電すれば何度も再利用でき、小さくても大きな電力を取り出すことができます。また、強力な磁気を持つネオジウム鉄磁石は、高性能のモーターの開発を実現し、さらに、大きなパワーを制御するトランジスタも電気自動車には欠かせない技術です。

 

集積台車という新しい概念の車体

部品をコンパクトにまとめ、加速、広さ、乗り心地を向上させる車体の技術

集積台車という新しい概念の車体

 

──こうした技術を応用して、エリーカが誕生したわけですね。

今後の商品化に向けては、どんな課題がありますか。


近著紹介
『温暖化防止のために―科学者からアル・ゴア氏への提言』(ランダムハウス講談社)
近況報告

※清水 浩先生は、2013年3月に慶應義塾大学環境情報学部教授を退職されました(編集部)

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