こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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東北、アフリカ、ベーリング海、アマゾン…と、 世界各地でのフィールドワークから 「自然と人との共生」を考えています。

狩猟採集民から学ぶ自然と人との共生

国立民族学博物館民族社会研究部教授 総合研究大学院大学文化科学研究科教授

池谷 和信 氏

いけや かずのぶ

池谷 和信

1958年静岡県生まれ。81年東北大学理学部地学系地理学科卒業、83年筑波大学大学院環境科学研究科修士課程修了、90年東北大学大学院理学研究科博士過程単位取得退学。北海道大学文学部附属北方文化研究施設文化人類学部門助手、国立民族学博物館助教授を経て、2007年より現職。専門分野は環境人類学、人文地理学、生き物文化誌学。熱帯の狩猟採集文化、家畜飼育文化の変容に関する比較研究、南部アフリカにおける先住民運動に関する研究、地球環境史の構築に関する研究を行っている。著書に『山菜採りの社会誌 −資源利用とテリトリー−』(東北大学出版会)、『現代の牧畜民 −乾燥地域の暮らし−』(古今書院)、編著書に『地球環境史からの問い −ヒトと自然の共生とは何か−』(岩波書店)、『日本列島の野生生物と人』(世界思想社)など多数。

2012年5月号掲載


池谷 ええ。ベーリング海ならクジラ猟やトナカイの牧畜がありますし、一方、アマゾンに行けば密林の中で20mも上にいる獲物を長い吹き矢で獲ったりしています。さらに、獲物を皆で分け合って食べたかと思えば、その獲物が連れていた子どもを親に代わって育て、大きくなったらまた食べるといった食文化もあります。われわれがまったく想像もできないような形で、自然と関わりながら生きているんです。

 

──自然と人間との関わりは、どこに行っても密接であることがよく分かりました。ただ最近は、自然は自然、人は人、と区分けしたり、狩猟を禁止する区域を作るなどの動きが見られますね。

池谷 おっしゃる通り、自然と野生動物の保護を目的に指定される国立公園、世界遺産などは、いわば自然と人とを「区分け」していると言えます。つまり、自然と人との関わりが薄れていくということです。果たして、それが地球や人類の未来にとって望ましいのか否か…。この点については、真剣に議論していく必要があると思っています。
また、私は世界の各地を回ってきましたが、日本は山あり、川あり、海あり、気候も寒冷から亜熱帯まで、非常に多様性のある風土です。世界を凝縮したような自然環境があって、そうした中で、その環境とうまく調和しながら生きていく文化が培われてきたのです。こうした私たち日本人の文化を、世界にもっと発信していくことも、これからの人類の自然との関わりを考える上で、とても役に立つものではないかと考えています。

──それは素晴らしいですね!日本が培ってきた文化が、これからの環境問題や自然と人との共存を考える上での、大事な指針になっていくことを大いに期待しています。
本日はありがとうございました。

 


近著紹介
『日本列島の野生生物と人』(世界思想社)
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