こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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古代の技術や生活を実験したり、実践することで たくさん面白い発見があります。

縄文生活を再現する

原始技術史研究者 和光大学非常勤講師

関根 秀樹 氏

せきね ひでき

関根 秀樹

1960年福島県生れ。和光大学中退。東北工業大学客員研究員、原始技術史研究所主任研究員を経て、同研究所主幹、和光大学非常勤講師に。同時に、古代楽器・民俗楽器のコンサートを仕掛けたり、各地の美術館や博物館で多彩なワークショップを展開している。主な著書に『民族楽器をつくる』(93年、創和出版)、『縄文生活図鑑』(98年、創和出版)など。

1999年9月号掲載


縄文時代の「鈴」を試行錯誤して復元

──本日は、先生のご専門の一つである「原始技術史」の話を中心に伺いたいと思います。

まず、あまり耳にしない分野ですが、どういったことを研究されているんですか。

関根 簡単に言うと、古代の生活技術や知恵を実験しながら研究するわけです。

例えば、縄文時代の遺跡から出てきた鈴。これは土を焼いてできているんですが、普通、丸くて振ると音がするから「鈴」だろう、と推測して終ると思います。私の場合、ここからが本当の研究で、同じものをつくってみようと、いろいろじっくり観察をします。そうしたら、表面にまったく穴がない、中空の鈴があったんです。その中に石が入っていて音がするんですが、何かおかしいと思いませんか。空気抜きがないんです。

──確かに、そのままでは焼いている途中に破裂してしまいますよね。

関根 そうです。そのままでは割れてしまいます。

「こんなものつくれるはずがない」と陶芸家さえも言っていたんですが、実際現物があるわけですからつくり方があるはず。試行錯誤して、やっと同じものができたんです。実は、粘土一に対して二−四割の砂を混ぜてつくったんです。そうすることによって、表面が粗くなり、空気が勝手に逃げていくわけです。

──なるほど。実際に試したりつくってみることで、見た目や形から得られる以外のいろんな情報、当時の技術とか生活様式などが分りますね。

関根 実際やってみると、たくさん面白い発見があるんですよ。

研究室には手づくりした古代の道具が所狭しと並んでいる
研究室には手づくりした古代の道具が所狭しと並んでいる

近著紹介
縄文時代の生活様式が詳しく書かれている先生の著書『縄文生活図鑑』(創和出版)
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