こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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生命は地球で誕生したのか、宇宙から来たのか。 そのルーツを探っています。

「生命の起源」から世界の“今”と“未来”を考える

広島大学大学院生物圏科学研究科准教授

長沼 毅 氏

ながぬま たけし

長沼 毅

1961年神奈川県生まれ。89年筑波大学大学院生物科学研究科博士課程修了。海洋科学技術センター[現・(独)海洋研究開発機構]研究員、カリフォルニア大学サンタバーバラ校海洋科学研究所客員研究員などを経て、94年より現職。専門分野は生物海洋学、微生物生態学。「生命の起源」を研究テーマに、極地や辺境地など過酷な環境に生存する珍しい生物を調査しており、「辺境生物学」という学問を開拓。宇宙飛行士採用試験に応募し、最終選考まで残った経験を持つ(その際の採用者は野口聡一氏だった)。著書に『深海生物学への招待』(NHKブックス)、『生命の星・エウロパ』(NHKブックス)、『深層水「湧昇」、海を耕す!』(集英社)、『宇宙がよろこぶ生命論』(筑摩書房)、『辺境生物探訪記』(光文社)など多数。

2012年4月号掲載



長沼 おっしゃる通りだと思います。研究のテーマは「生命の起源」ですが、未来のことも常に念頭にあるんですよ。
地球や宇宙の歴史の中から、われわれ自身、現在の世界を見直す、未来を考えるというのが大事なんです。

アタカマ砂漠の中にある白く塩に覆われた「アタカマ塩地」。アタカマ砂漠はチリの北部にあり、太平洋とアンデス山脈の間を南北に細長く走る。世界で最も乾燥した砂漠。不毛で岩塩や石灰の堆積層で覆われている所が多い<写真提供:長沼 毅氏>
アタカマ砂漠の中にある白く塩に覆われた「アタカマ塩地」。アタカマ砂漠はチリの北部にあり、太平洋とアンデス山脈の間を南北に細長く走る。世界で最も乾燥した砂漠。不毛で岩塩や石灰の堆積層で覆われている所が多い<写真提供:長沼 毅氏>

暴力的な本能と、それを抑制する意識を併せ持つ人類


──われわれ人類の現在と未来について、先生はどう見ておられますか?


長沼 われわれ人類はみな、暴力的な本能を持っています。だから戦争も絶えないのです。しかし一方で、暴力を抑制しようという意識も持っている。これは生物全体から見ると特殊で、他には存在しません。


──そういえば、国際情勢を見ても、戦争をする国もあれば、国同士の争いごとを抑えようとする動きもありますね。


長沼 ええ。その代表的なものとして、南極条約というものがあります。南極は占領してはいけない、領土権を主張してはいけないなどという取り決めがあるのですが、一番重要なのは、鉱物探査をしてはいけないということです。


──鉱物資源が絡むと、絶対に人間は喧嘩しますからね。それを防止しようという働きですね。

 


近著紹介
『辺境生物探訪記』(光文社)
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