こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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神秘的な性質を持つ「クモ」。 その奥深さに、人間が学ぶ点はたくさんあると思います。

柔らかくて強いクモの糸の神秘

奈良県立医科大学医学部教授

大崎 茂芳 氏

おおさき しげよし

大崎 茂芳

1946年兵庫県生れ。大阪大学理学部高分子学科卒業、同大学院理学研究科博士課程修了。神崎製紙蝓文讐子製紙蝓妨Φ羂、技師、螢縫船し弍調覯莠蕊長、螢泪ぅル商品研究所所長、島根大学教授を経て現職。高分子学会、日本蜘蛛学会、日本バイオマテリアル学会、繊維学会などに所属。著書に『クモの糸の秘密』(岩波ジュニア新書)、『コラーゲンの話〜健康と美をまもる高分子〜』、『クモの糸のミステリー〜ハイテク機能に学ぶ〜』(いずれも中央公論新社)、『クモはなぜ糸から落ちないのか』(PHP研究所)など多数。2006年5月、クモの糸で作った紐に自らぶら下がり話題となる。趣味は物件を見て回ること。これまでに、十数回の引っ越しを経験されているとか。

2010年1月号掲載


目的に応じて糸を使い分けるクモ


──先生は、糖質、タンパク質、核酸などの高分子を研究する「生体高分子学」がご専門で、これまでに、コラーゲン線維の並びを迅速に測定できる方式を世界に先駆けて見出されたり、皮膚移植法を提案されたりと、多岐にわたりご活躍されていらっしゃいます。その一方で、「クモ」に関する研究の第一人者としても有名でいらっしゃいますが、そもそもクモに興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか?


 私は一時期、一般の企業に勤めていたことがあり、そこではシールなどに使う粘着剤の研究に携わっていました。その時、ある科学雑誌に「粘着とクモの糸」についての記事を書いてほしいとの依頼がありまして、引き受けるからにはきちんとクモのことを知ったうえで書こうと思い、いろいろと調べたところ、クモの生態は何とも奥深い! いつの間にか、クモの魅力、特に『クモの糸』の魅力に引き込まれてしまっていたんです。

──クモの糸には、どんな魅力が隠されているのですか?

 クモの糸の魅力を語り始めるとキリがありません(笑)。例えば、クモは、目的に応じて糸を使い分けることができるんです。クモの巣の「横糸」は、エサとなる虫を捕らえるために粘着球が付いていますし、獲物を巻き付ける時には「捕獲帯」という糸を使う、また、横糸を張るために「足場糸」をあらかじめ張っておく、といった具合に。

──なるほど。一見、同じ糸でできているように見えますが、クモは実は数種類の糸を巧妙に使い分けているんですね。

クモが張る代表的な円網 1.枠糸、2.けい留糸、3.縦糸、4.横糸、5.こしき、6.付着盤、7.牽引糸

クモが張る代表的な円網 

1.枠糸、2.けい留糸、3.縦糸、4.横糸、5.こしき、6.付着盤、7.牽引糸

──ところで、先生はクモの糸の中でも特に、獲物を迅速に捕まえる際や、危機に遭遇して逃げる場合などの「命綱」として使う「牽引糸」に注目されています。その糸をたくさん集めて『クモの糸の紐』を作り、それをハンモックの一部に使って、先生ご自身がぶら下がることに成功されたそうですね。芥川龍之介の小説『蜘蛛の糸』に出てくるカンダタが、蓮の池から地獄へ垂らしたクモの糸につかまって、よじ登るシーンを思い出します。

 まさに、カンダタの話がぶら下がりの原点でして(笑)。ある異業種交流会で私がクモの糸について話をした時、出席者の1人が「『蜘蛛の糸』の世界が実現できれば、センセーショナルが巻き起こりますね」といったのを聞いて、「なるほど、クモの糸にぶら下がることができたら面白いな」と思ったんです。それで、19万本の糸を束ねて、太さ約4个砲掘1周の長さがおよそ20僂良海領悗鮑遒蠅泙靴拭

大崎先生が手にしているのが牽引糸の輪。この輪を作るためには、相当な根気が必要
大先生が手にしているのが牽引糸の輪。この輪を作るためには、相当な根気が必要<画像提供:大茂芳氏>

──しかし、19万本の糸を集めるなんて凄いですね。しかも、相手は生き物ですから、こちらの思い通りにいかないことも多かったのではないですか?


近著紹介
『クモの糸の秘密』(岩波ジュニア新書)
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