こだわりアカデミー
闇夜に浮かぶ美しい発光生物には 多くの可能性が秘められているんです。
生物発光の不思議
独立行政法人産業技術総合研究所 静岡大学大学院助教授
近江谷 克裕 氏
おおみや よしひろ
おおみや よしひろ 1960年生れ、北海道出身。83年、群馬大学工学部卒業、90年、同大学院医学研究科内分泌学専攻修了、医学博士。90年、(財)大阪バイオサイエンス研究所特別研究員、92年、新技術事業団独創的個人研究事業「さきがけ研究21」研究員、95年、理化学研究所光合成科学研究室協力研究員、96年、静岡大学教育学部助教授、2000年、通商産業省(現経済産業省)・大阪工業技術研究所主任研究員)などを経て、01年より現職。発光生物を通じて生物の進化・分散の研究および生物発光の分子システムを解明に取り組んでいる。主な共著に、「図説生化学」など。他論文多数。
(※2007年4月に北海道大学大学院医学研究科教授に就任されました)
2005年5月号掲載
活性酸素の除去のために生物は光っている
──さて、発光生物というと、どういったものがありますか? それに、どうして光っているのでしょうか?
近江谷 バクテリア、藻、クラゲ、昆虫、ホヤ、魚など幅広い生物種で存在しています。
生物は活動すると体内に活性酸素が生成されますが、この活性酸素というのは人間にとっても多くの病気の原因にもなるという、生物全体にとって非常にやっかいなものです。生物は、これら活性酸素を体内で消去・除去する作業を行なっていて、これを一般にスカベンジと呼んでいます。光る生物は活性酸素を壊す際にエネルギーを光として放出しているんですね。
ちなみに人間などの高等生物は、カタラーゼなどの酵素をはじめ、進化の過程でさまざまなスカベンジ手法を身に付けているため、光らなくて済むようです。
──けれども、せっかく光っているのだからと、その光をうまく利用する生物も出てくる…。
近江谷 そうなんです。ホタルなどはその典型例で、発光色により自分と同種のホタルを見付け出します。自分達の子孫を残すためにそうしているわけですが、色の違いを利用してマッチングを行なっている良い例です。また、ホタルイカは青色で発光しますが、これは海の底から天敵に見上げられた場合に、光ることによって自分の姿が海面に黒く映るのを防ぐためといわれていますし、トビイカの黄色い光は雄と雌の交信だともいわれています。
発光甲虫はホタル科やヒカリコメツキ科などの4科あり、ホタル科だけでも世界で2000種以上いるといわれている。写真はブラジル産ヒカリコメツキムシ 〈写真提供:近江谷克裕氏〉 |
しかしながら、発光生物すべてが発光をスカベンジ以外に活用しているというわけではありません。これがまた面白いところですね。
『発光生物のふしぎ』(サイエンス・アイ新書) |
2007年4月に北海道大学大学院医学研究科教授に就任されました
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