こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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「ファーブルの里」をつくって 子供達に思いっきり虫捕りをさせてやりたい。

昆虫採集の復権を目指す

埼玉大学教養学部教授 日本昆虫協会会長

奥本 大三郎 氏

おくもと だいざぶろう

奥本 大三郎

1944年3月6日(啓蟄)、大阪市生まれ。東京大学仏文科大学院修了。昆虫採集家としても有名。愛読書は『ファーブル昆虫記』。フランスのファーブルゆかりの地をはじめ、ヨーロッパ、東南アジアなどへ何度も採集旅行を重ねている。今年、翻訳本『ファーブル昆虫記』(全8巻)が集英社より発行され話題に。虫に関する主な著書に『虫の宇宙誌』(第33回読売文学賞受賞)、『百蟲譜』『虫の春秋』『珍虫と奇虫』などがある。今年5月、昆虫採集の復権を目指し、日本昆虫協会を設立。初代会長に選ばれた。

1991年11月号掲載


ちょっとした木があるだけでも虫は増える

──それは楽しいですね。でも、ちょっとやそっとの面積では、とうてい不可能ではないのですか?

奥本 とんでもない。それが鳥や獣との違いでして、虫は、ちょっとした木があるだけで、増えること、増えること、それはすごいですよ。

──都心でも?

奥本 もちろん!今だって、東京のド真ん中のプールには、銀ヤンマなんかがずいぶん発生しているのです。それを毎年洗うから死んじゃってるわけです。

例えば、家の庭にカラスザンショウなんていう植物を植えると、蝶々がいっぱい飛んできます。薬を撒かなきゃどんどん増えるんです。

要するに、虫が何を食べるかを考えておけば、丈夫な普通種ならそのへんの町の公園でも大丈夫なんです。

──自然というのは素直なものなんですね。どのくらい増えるものなんですか。

奥本 例えば、1匹の蝶々は200、300と卵を産むんです。蝶々によっては1年に4回くらい世代交代するから、すぐに何百万匹にもなります。

──ネズミ算なんてもんじゃないですね。

奥本 チョウチョ算ですね。(笑)

しかも、ある一種類の虫だけが増え過ぎないように、虫同士の間でコントロールし合っているんです。一種類の虫が増えると、寄生の虫がそこにワッと来る。それで共倒れになっていったんは静かになり、それからまた増えるわけです。その繰り返しです。

例えば、アゲハが卵を産みますと、それに卵蜂という小蜂が来て、大半の卵を食べてしまいます。かろうじて残った卵がかえると、その幼虫の身体に、今度は、アオムシサムライコマユ蜂が来て、卵を産み付けるのです。卵は、その幼虫の身体を最後の最後まで生かしながら食い殺し、自分たちが世に出て来る。それでも生き残った幼虫が、やっとサナギになれた時にも、また小蜂が来る、といった具合で、その間も、鳥に食われたり、ビールス病にかかったり、といろんな場面を切り抜けて、生き残るものは生き残っていくわけです。そうやってちゃんと増えていく。

──それだけいろんな障害があっても、結果的に昆虫は増えていくわけですね。われわれが網を持って追いかけたくらいでは、絶滅しませんね。

奥本 そうです。ですから、思う存分の環境を与えたらどうなるか。よく新聞などに「ギフチョウ絶滅寸前・・・」なんて書いてありますが、もしわれわれに任せてくれれば、10年でギフチョウの佃煮を売り出して見せます。(笑)


近況報告

その後の著作として『虫の春秋』(集英社文庫)、『読書百遍』(TBSブリタニカ)、『本を読む』(集英社文庫)などがある。 また『週刊読売』において「奥本大三郎の新博物誌」を連載中。
今年の夏(8月20日−30日)には「ファーブルの足跡を訪ねて」というツアーを実施。アヴィニヨンやコルシカへ行くとのこと(お問い合わせはアサヒ・トラベルインターナショナルへ)。

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