こだわりアカデミー

こだわりアカデミー

本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
MENU閉じる

アルツハイマー病治療を根本から変える 画期的な薬を開発しました。

アルツハイマ−病の根本的治療薬を開発

京都薬科大学教授・創薬科学 フロンティア研究センター長 

木曽 良明 氏

きそ よしあき

木曽 良明

きそ よしあき 1945年、広島県生れ。68年、京都大学薬学部製薬化学科卒業、73年、 京都大学大学院薬学研究科修了。同年、日本学術振興会奨励研究員、74年、 京都大 学薬学部文部技官。75年、ピッツバーグ大学医学部蛋白質研究室リサーチアソシエー ト。77年、徳島大学薬学部助教授。83年、京都薬科大学教授。99年、創薬科学フロン テ−ア研究センター長。2000年、京都薬科大学大学院薬学研究科長。研究分野はペプ チド合成化学、ペプチド医薬化学。03年、日本ペプチド学会・学会賞、04年、Cathay Award受賞。

2006年5月号掲載


確実に進行する痴呆症状

──発症すると、どんな症状が出てくるのですか?

木曽 初めは物忘れが目立つようになり、進行すると、今日何をしたか、誰に会ったかなど、その日の出来事が思い出せなくなります。
軽度の段階では、自立した生活はできますが、仕事などは続けられなくなっていきます。

──さらに進行すると、どうなるのですか?

木曽 自己中心的になるなど、人格の変化や、幻視妄想などが起こります。
財布を誰かが盗んだなどという被害妄想も起こり、身の回りの人に嫌疑を掛けるようになります。
さらに進行すると、場所や時間が分らなくなり、古い記憶も失われ、見当識障害、徘徊など、異常行動が見られるようになります。

──自立が困難になってしまうのですね。本人だけでなく、家族にとってもつらい病気ですね。

木曽 ええ、身体的な障害はほとんどなく、痴呆症状のみが徐々に、しかも確実に進行していく特徴があります。
重度になると、家族の名前や顔も分らなくなり、会話も成り立たなくなります。また末期には、寝た切りとなり、失禁、拒食・過食、痙攣など、介護も困難となります。

──いわゆる痴呆症とよく似た症状なのですよね?

木曽 そうなのですが、「痴呆」と一口にいっても、大きく分けて3つのパターンがあるのです。
1つは、脳卒中が原因となって起こるもので、片麻痺、言語障害などの身体的障害を伴います。2つ目は正常な加齢によって起こるもの、そして3つ目は、アルツハイマー病です。それぞれの病症の境目は今のところ曖昧です。

──医学的には、アルツハイマー病は、どのように判断されるのでしょうか?

木曽 脳波やCTスキャン、MRIなどで脳を調べて行ないます。

──アルツハイマー病の方の脳は、何か特徴があるのですか?

木曽 はい、特に知的機能を司る前頭葉で顕著に現れます。
まず、全体的に脳が萎縮し、神経細胞の外側に「老人斑」と呼ばれるしみ状の物体が数多く見られるようになります。
また、脳神経細胞の中で、細い線維が異常に絡まり、ねじれ合う「神経原線維変化」と呼ばれる状態になっていきます。
これらが同時に認められて初めてアルツハイマー病という判定がなされるのです。


前へ     1 / 2 / 3     次へ

サイト内検索

  

不動産総合情報サイト「アットホーム」 『明日への扉〜あすとび〜』アットホームオリジナル 動画コンテンツ