こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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糖尿病、高血圧症、高脂血症、喫煙、肥満 ストレスが動脈硬化を促進させます。

動脈硬化をどう防ぐか

九州大学医学部講師・医学博士

岡留 健一郎 氏

おかどめ けんいちろう

岡留 健一郎

1946年 鹿児島生まれ。1971年九州大学医学部卒業。'78年ベルツ賞受賞(※)、'79年九州大学大学院博士課程修了。医学博士。九州大学医学部講師、日本脈管学会評議員、国際脈管学会会員(FICA)、福岡県社会保険支払い基金審査委員ならびに特定疾患審査委員を併任。主な著書:「実地医家のためのノーハウ」(世界保健通信社)、「救急医療の基本と実際」(情報開発研究所)、「血管外科の看護」(医学評論社)、「血小板と循環器疾患の関連をめぐって」(日経メディカル)など。他、血管外科に関する英文論文多数。

1990年11月号掲載


動脈硬化は心筋梗塞や脳梗塞の原因に

──高齢化社会の到来とともに、健康づくりへの関心が高まっています。岡留先生は、血管をご専門に研究されていらっしゃるということなので、今回はわれわれにとっても他人事(たにんごと)ではない「動脈硬化」についてお伺いしたいと思います。「動脈硬化」とは、具体的に、どんな状態になることを言うのですか。

岡留 普通の動脈は、拡張、そして収縮という一定のリズムで動いています。それが動脈硬化になりますと、文字通り動脈が硬く、しかも脆(もろ)くなるので、その血管は拡張・収縮ができなくなり、心筋梗塞や脳梗塞を起こす原因になります。

──拡張・収縮ができないということは、血が流れないということですね。

岡留 そうです。現在、アメリカをはじめ日本でも動脈硬化をいかにしてくい止めるかという研究が行われていますが、最近になって、動脈硬化というのは年をとるとなるのではなく、生まれつき動脈硬化になりやすい要素を持っている人とそうでない人がいるということがわかってきました。

──先天的に動脈硬化になりやすい体質の人がいるということですね。では、後天的な要因というのは・・・。

岡留 動脈硬化を促進する危険因子というのは、アメリカの研究でいくつかはっきりしてきています。糖尿病、高血圧症、高脂血症、喫煙、それに肥満です。私はこの他にも、ストレスが関係しているのではないかと思っています。

──糖尿病や高血圧症による動脈硬化というのは、よく聞きますね。

岡留 ええ。糖尿病があると動脈硬化の進行がとても速くなります。また高血圧症については、特に日本人の場合、脳血管障害を起こす人は高血圧症と非常に関連が深いのです。

──というのは・・・。

岡留 血圧が上がると血管の壁に与える力が非常に強くなりますから、血管はそれに負けまいとして、より強く硬くなろうとします。その結果、動脈硬化が進み、脳血管障害を起こすことになるわけです。

──高血圧症に対する予防法を教えていただけますか。

岡留 食塩類を控えることですね。食塩をとり過ぎると血液中の食塩濃度が高くなり、その濃度を下げ、体の中の水分を保持するために、心臓が血圧を高めて体液を動かしていかざるを得ないという状況になります。その結果、高血圧になるばかりか、心臓に負担が加わって高血圧性心臓病になったり、動脈硬化を進めたりするわけです。

──まさに悪循環ですね。ところで、血圧が高いとか低いとかいうのは、何が基準なんでしょうか。

岡留 血圧は上がいくつ、下がいくつと言いますね。上とは「収縮期血圧」下とは「拡張期血圧」のことです。普通、成人では収縮期血圧が130、拡張期血圧が70程度で、上下で40から60くらいの差があります。この差を「脈圧」といいますが、これが狭まってくると非常に危険です。それだけ心臓病、あるいは動脈硬化が進んできているということです。年をとってくると、上は160、170くらいになってきますが、動脈硬化が進んでいなければ、下は60、70の状態です。下が100とか110、120となってきたら、動脈硬化がかなり進んでいるということですね。だいたい90がボーダーラインです。

──なるほど。そういうことですか。


近況報告

その後1998年より済生会福岡総合病院院長を務める。また1999年より九州大学医学部臨床教授を併任。

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