こだわりアカデミー
オゾン濃度はこの100年で2倍以上に。 進む大気汚染、地球温暖化をどう食い止めるか
地球規模でオゾンを追う
(独)国立環境研究所 地球環境研究センター・地球大気化学研究室室長
谷本 浩志 氏
たにもと ひろし
1972年香川県生まれ。96年東京大学理学部化学科卒業、98年同大学院理学系研究科化学専攻修士課程、2001年同博士課程修了。同年より(独)国立環境研究所・大気圏環境研究領域大気反応研究室勤務。05年同主任研究員に、その後ハーバード大学客員研究員などを経て、11年より現職。10年に国連「大気汚染の半球規模輸送タスクフォース」評価報告書を共同執筆、12年より国際地球大気化学プロジェクト(IGAC)・科学運営委員会メンバーを兼任。
2014年7月号掲載
谷本 最近はなかなか行けませんが、なんといっても現場に行くことですね。フィールドワークが好きなんです。実は理系に進学したものの、実験室にこもって研究をするのはもともと苦手でした。ところが、大学4年生のときにあるプロジェクトに参加して、チームでやる仕事が面白くなって。また、当時の研究室の教授の勧めで化学と地球物理を足して2で割ったような対流圏オゾンの研究に興味を持つようになったんです。
──めぐり合わせを感じますね。オゾンの他には、今後はどのようなテーマを?
谷本 大気汚染には直接関係ないのですが、ここ5年間くらい、海をフィールドにした研究もしています。海に行ったとき、独特な臭いを感じたことはありませんか?
──磯臭さのことですか?
船から海水のサンプリング装置を下ろし、さまざまな深さの海水を採取する〈写真提供:谷本浩志氏〉 |
谷本 そうです。あの臭いには硫黄分の硫化ジメチル(DMS)というガスが含まれています。プランクトンが光合成で作り出すものなのですが、それが海から大気中に出ると、少しずつ酸化されて粒子になる。その粒子が核になって、やがて雲ができるという説が古くからあるんです。このメカニズムは、太古の昔から起こっていて、地球の気候調節に関わっているといわれているんです。でも、ほんとうにその説が正しいのか? そもそも生物は何のためにDMSを作っているのか? といった基本的なこともまだよく分かっていないので、ぜひそれを解明してみたいと考えています。
──太古の昔からとは…、また違う興味が湧きますね。
海水中のガスの濃度を表示〈写真提供:谷本浩志氏〉 |
谷本 DMSは世界の科学者の間でも興味深いテーマで、それだけをテーマにしたシンポジウムも開催されるほどです。大気、海、生物…さまざまなジャンルの科学者が参加するちょっとマニアックな会で、もちろん私も参加しています(笑)。
──地球の歴史を探るロマンを感じますね。これからもいろいろな角度からの大気のご研究を通じて地球の謎を解明し、地球を守っていただきたいですね。本日はどうもありがとうございました。
船の中の実験室。海上の大気と海水を測定している〈写真提供:谷本浩志氏〉 |
(独)国立環境研究所研究室は、2021年より(独)国立環境研究所地球システム領域と名称が変わりました。谷本さまは現在、副領域長としてご活躍されていらっしゃいます。
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