こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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機械と生き物を結び付けて、 「生きたロボット」をつくりたいんです。

再生医療への応用が期待される
機械と生物の融合

東京大学生産技術研究所准教授 バイオナノ融合プロセス連携研究センター センター長

竹内 昌治 氏

たけうち しょうじ

竹内 昌治

1972年東京都生まれ。1995年東京大学工学部卒業。2000年に同大学大学院工学系研究科機械情報工学専攻博士課程修了。同年日本学術振興会特別研究員。01年東京大学生産技術研究所講師、03年同助教授。04年ハーバード大学化学科客員研究員兼任。07年より現職(バイオナノ融合プロセス連携研究センター センター長は08年から兼任)。研究分野はナノマイクロテクノロジー。細胞を部品のように加工したり、人工的に細胞組織を組み上げる新手法で成果を挙げてきた。08年文部科学大臣表彰若手科学者賞、09年日本学術振興会賞を受賞。

2013年10月号掲載


再生医療、新薬開発など応用はさまざま

 ──それにしても、「点」や「線」、そして「面」と、生きた細胞を組み合わせていろいろな機能ができれば、多種多様な分野で生かせそうですよね。

竹内 はい。例えば、失われた臓器を代替するなど、再生医療の分野での活用が期待できます。再生医療といえばiPS細胞を思い浮かべると思いますが、iPS細胞なども、ファイバー状にして移植することで生着率が高まることが期待できるんです。
また、人体と類似した細胞組織ができれば、薬や化粧品、食品などの開発で、動物実験を行わなくても人体に対する影響を調べることができます。

──確かに、重要な技術になりそうです。

竹内 そのほかにも、細胞を使ったセンサーづくりも考えています。麻薬犬の嗅覚のような高感度な匂いセンサーをつくったり、ヘルスモニタリングができるよう、体の中に埋め込めるセンサーを開発したり。また、その他にも食肉を人工的につくれれば、将来動物を殺さなくてもいいかもしれません。

──いろいろな可能性が考えられますね。

竹内 そうですね。近い将来では、糖尿病治療への応用が実現できると思います。糖尿病は膵臓の中の膵島でつくられるインスリンが不足して、血液中の糖が必要以上に増えて起きる病気ですが、マウスの膵臓から分離した膵島細胞でファイバーを作製し、これを糖尿病疾患のマウスに移植したところ、血糖値が正常値範囲まで下がり、取り除くと、再び血糖値が上昇することが確認できました。

──それはすごい! 糖尿病患者には朗報です。

糖尿病のマウスに膵島細胞ファイバーを移植した様子。線のように見えるのが、移植された膵島細胞ファイバー。移植を受けたマウスの血糖値は正常値まで下がった<写真提供:竹内昌治研究室>

竹内 ええ。また、細胞ファイバーの登場で、臓器や細胞を患者の体に埋め込むだけでなく、移植した後、不要になったファイバーを簡単に取り去ることができるようになるため、今後の移植医療が大きく変わる可能性も秘めています。

──治療が難しい病気への活用が進めば、病気への考え方も変わってくるかもしれません。
それでは、先生の今後の目標は?

竹内 将来的には、細胞を使った、世界初の優れた「究極の何か」をつくりたいです。その素材を応用して、今までにないユニークなものづくりを目指していけたらと思います。
そして、できることなら、子供の頃に見たSF映画に出てくるような、細胞でできたロボットをつくりたいですね(笑)。

──機械工学と生命科学の融合によって、ものづくりの無限の可能性のようなものを感じました。今後のさらなるご活躍に期待しています。
本日はありがとうございました。

 


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