こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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尿1滴でがんを検知。 線虫の優れた嗅覚を使った最新医療に挑む

線虫ががんのにおいを嗅ぎ分ける?

九州大学大学院理学研究院助教

廣津 崇亮 氏

ひろつ たかあき

廣津 崇亮

1972年山口県生まれ。97年東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻修士課程修了、2001年同博士課程修了、理学博士。01年〜03年日本学術振興会特別研究員(東京大学遺伝子実験施設)、04年京都大学大学院生命科学研究科ポスドク研究員、05年より現職。02年井上研究奨励賞受賞(井上科学振興財団)。

2016年11月号掲載


廣津 そこが次の課題として、がんの種類を特定するところまでいければと考えています。がんだと分かっても、何がんなのかが分からないとその後の治療につなげることができませんから。

──どうやって特定するんですか?

廣津 がんは種類によっても微妙ににおいが違うことが分かっています。その違う部分のにおいを受け取る受容体が特定できれば、がんの種類を見分けることができると考えています。線虫は遺伝子組み換えが簡単にできるので、特定のがんだけに寄っていくCエレガンスをつくることができるのです。

──それはすごい。最初は何がんの特定を?

廣津 第1ターゲットとして、現在早期発見が難しいすい臓がんが特定できればと考えています。すい臓がんを識別するための受容体はいくつか分かってきていますので、あとはすい臓がんのにおいを好むCエレガンスをつくって実験すれば可能になると考えています。

──この手法が確立されれば、世界的にもすごい発見・発明だと思うのですが、外国の研究者などにもっていかれてしまう危険などは…。

廣津 それは考えられますが、私も今後は日本人だけでなく、食習慣や体質などが異なる外国人を対象とした実験も行いながら、アメリカやヨーロッパなど、海外での展開も視野に入れています。

──先生の研究によって、がん治療の可能性が大きく拡がりますね。今後の成果に期待しております。本日はどうもありがとうございました。

廣津先生の研究により、がん治療の可能性が大きく拡がる(イメージ写真)


近況報告

廣津先生が代表を務める(株)HIROTSUバイオサイエンスは2017年4月18日、(株)日立製作所と線虫によるがん検査の実用化に向けた共同研究開発契約を締結しました。今後両社は、線虫がん検査法「N-NOSE」の実用化に向けて、日立が新たに開発した線虫がん検査自動解析技術を活用した検査の自動化についての共同研究を行なっていきます。

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