こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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ゴリラの社会には 人間の社会構造の根底を探るヒントがあります。

ゴリラに見る人間社会の起源

京都大学大学院理学研究科教授

山極 寿一 氏

やまぎわ じゅいち

山極 寿一

やまぎわ じゅいち 1952年、東京都生れ。75年、京都大学理学部動物学科卒業後、京都大学院理学研究科博士課程修了。京都大学霊長類研究所助手、大学院理学研究科助教授を経て現職。78年−83年、アフリカ・ビルンガでゴリラの研究に従事。80年から2年間ケニアの日本学術振興会アフリカ研究センターに勤務。83年、日本モンキーセンター研究員。主な著書に『ゴリラとヒトの間』(93年、講談社)、『家族の起源 父性の登場』(94年、東京大学出版会)、『ゴリラ雑学ノート「森の巨人」の知られざる素顔』(98年、ダイヤモンド社)、『オトコの進化論 男らしさの起源を求めて』(2003年、筑摩書房)など多数。

2004年4月号掲載


顔の見つめ合いによってコミュニケーションを図る

──ところで、先生は大学院生の頃には、屋久島に通いつめて、ニホンザルの研究をされていらしたそうですが、なぜゴリラの研究へ移行されたのですか?

山極 人間に近い類人猿を調査したいと思い、さまざまな可能性を探りましたが、その中でもゴリラにすっかりのめり込んでしまったのです。

ゴリラには他のサルにはない、体から放たれる活力があり、人間がかなわない「威厳」を持っていると感じるのです。人間が本来あるべき姿を、ゴリラには見ることができます。

当初の研究テーマは、ゴリラ社会の中に、人間の「家族」の起源を見出すことでした。

──なるほど。先生はゴリラに惚れ込んでしまったというわけですね。先生にとってのゴリラの魅力とは?

山極 お互いの顔を見つめて、コミュニケーションを図るところです。これは他のサルにはない行動です。

一般的にサルの社会では、相手の顔を見つめる行為は威嚇であり、強いサルの特権だといわれています。

そんなふうに思っていたので、ゴリラの観察を始めた当初も、なるべく目を合わさないように、下を向いていました。しかし、逆にゴリラの方から、私の顔を何度も覗き込みに来るんです。一体これはなぜだろう?と、初めはとても不思議に思いましたよ(笑)。

──ゴリラにとって、相手の顔を見つめる行為は敵対ではないのですね。人間と同じように、相手の機嫌をうかがう、社会行動を行なっているのでしょうか。

山極 そうなんです。これにはとても驚きました。

相手の顔を見る行為は、ゴリラにとって強烈な意思表示になります。視線にはいろいろな意味が込められていて、言葉はなくても、対面姿勢をとることで、コミュニケーションをとっているのです。

──人間も言語を使う前は、そうした行動をとっていたのかもしれませんね。


近著紹介
『オトコの進化論 男らしさの起源を求めて』(筑摩書房)
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