こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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万葉歌に多方面の研究を重ね合せて見ると… 万葉びと達の暮らしと心が見えてくるんです。

万葉集には生活文化の情報がぎっしり

奈良大学文学部教授

上野 誠 氏

うえの まこと

上野 誠

うえの まこと 1960年、福岡県生れ。65年、国学院大学卒業、同大大学院文学研究科博士課程後期単位取得満期退学。文学博士。財団法人奈良県万葉文化振興財団万葉古代学研究所副所長。研究のテーマは、万葉挽歌の史的研究と万葉文化論。「体感する万葉」をモットーにMBSラジオ「上野誠の万葉歌ごよみ」やNHKラジオ「ないとえっせい」などでも活躍している。著書に『古代日本の文芸空間−万葉挽歌と葬送儀礼』(雄山閣出版)、『万葉びとの生活空間−歌・庭園・くらし−』(塙書房)、『芸能伝承の民俗誌的研究−カタとココロを伝えるくふう−』(世界思想社)、『万葉にみる 男の裏切り・女の嫉妬』(NHK出版)、『おもしろ古典教室』(ちくまプリマ−新書)、『小さな恋の万葉集』『万葉体感紀行』(ともに小学館)など多数。

2007年3月号掲載


ネクタイをしない『ヒルズ族』も文学的な研究対象に

──それにしても、先生が新たな研究手法を投入することによって、新しい切り口や見方が生れるということは、解釈としても随分楽しくなりますね。

上野 例えば、現代のビジネスマンはスーツを着て、ネクタイをしている場合が多いですが、『ヒルズ族』と呼ばれている人々はあまり好んではネクタイをしません。それは、既成の価値観に対する何らかの抵抗的な姿勢を示してもいるわけです。そういった視点で情報を拾い直し読み返してみる…。こうやって社会情勢や現状について考えてみることは、とても文学的であるとも思っているんですよ。

 

──なるほど。どうりで先生の執筆された万葉集の解説書は、現代人の感覚に通じるような臨場感が味わえるのですね。どうして面白いのか、よく分った気がします。

本日はどうもありがとうございました。

【取材を終えて】

取材日当日、お互いの軽い挨拶の後に、上野先生の口から「これもご縁ですね」との言葉が。

はて? と思っていると、先生が「もとは親父のもので、僕がずっと持っていました」と、デスクから青い大きな穴あけ用パンチを持ってきてくれました。

よく見てみると、それには、今から約30年程前に私がデザインした「福岡県不動産流通センター」のシールが…。

上野氏が長年愛用している穴あけ用パンチには「開設記念 1979.4 福岡県不動産流通センター」のシールが
上野氏が長年愛用している穴あけ用パンチには「開設記念 1979.4 福岡県不動産流通センター」のシールが

何でも先生のお父様は以前、不動産会社を経営されていたそうで、穴あけ用パンチは協会からいただいたものだそうです。

お父様がお店をたたんだ今では、唯一、不動産の仕事をしていた証拠なんだとか。

ちなみに、その穴あけ用パンチは当時では珍しく厚い書類にも使用できたとかで、先生の論文のみならず、現在でも先生のところで学ぶ数多くの学生さんの卒業論文を綴じるのに活用されているそうです。(松村)


近著紹介
『おもしろ古典教室』(筑摩書房)
近況報告

上野 誠先生は、2021年4月より國學院大學文学部日本文学科教授(特別専任)に就任されました。

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