こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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今や世界中に100品種。多様化したイエネコの歴史を レトロウイルスの痕跡から裏付ける

DNAからイエネコのルーツを探る

京都大学ウイルス研究所准教授

宮沢 孝幸 氏

みやざわ たかゆき

宮沢 孝幸

1964年生まれ。90年東京大学農学部卒、93年同大学大学院農学生命科学研究科博士課程獣医学専攻修了。獣医学博士。96年同研究科助手、2001年大阪大学微生物病研究所エマージング感染症研究センター助手、02年日本科学技術振興事業団さきがけ21(PRESTO)研究員、03年帯広畜産大学畜産学部助教授等を経て、05年京都大学ウイルス研究所准教授に就任。

2016年6月号掲載


宮沢 人間と暮らすようになったことで、バイキングや貿易商人たちと一緒にヨーロッパを旅して周るネコも増え、大航海時代には新大陸へも上陸していきました。一方、仏教徒とともにシルクロードを旅したネコは、アジア方面へ向かい、最終的には日本まで辿り着きました。こうした過程でさまざまな交雑が繰り返され、品種も増えていったと推測できます。

19種類のイエネコのウイルス感染状況を調査

──現在、世界には何品種くらい存在するのですか?

宮沢 約100種と言われています。

──それはずいぶん増えましたね。先生は、その経緯をウイルスで解明しようとされているのですね。

宮沢 はい。イエネコのDNAの遺伝子に入り込んでいる「レトロウイルス」という特殊なウイルスの痕跡を調べることで、中東から世界中に散らばっていったイエネコの歴史を遺伝学的に証明しようと考えているのです。レトロウイルスの中には、生殖細胞に入り込むことで子孫に代々受け継がれているものがあり、染色体の同じ場所に感染する特性を持っています。そのため、あるレトロウイルスが同じ場所に感染しているかを調べることで、共通の先祖をもつかどうかが分かるのです。感染していない場合は、そこで品種が枝分かれして別の系統になったと考えられます。

リビアヤマネコをルーツに、イエネコは今では世界中に100品種!

──レトロウイルスというと、HIV、白血病などを引き起こす怖いものというイメージがありますが…。

宮沢 もちろんそういう一面もありますが、無害、場合によっては有益な感染もあるんですよ。


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