こだわりアカデミー
人体解剖が困難だった時代は 動物の所見をあてはめていたようです。
解剖学の新たな展開
東京医科歯科大学医学部解剖学教授
佐藤 達夫 氏
さとう たつお
1937年仙台市生れ。63年東京医科歯科大学卒業。母校の付属病院でインターン生活を経た後、64年同大学大学院医学研究科へ進む。学位論文の「アシカの背筋を支配する神経に関する研究」以降、比較解剖学が研究の課題に。68年大学院を修了。福島県立医科大学に解剖学の講師として赴任。70年東北大学助教授。74年から現職、年60回行われる解剖実習の責任者として教育および献体業務に携わる。82年の「献体者への文部大臣感謝状贈呈制度」、83年の「献体法」の実現に貢献、現在、献体団体と医歯系大学の連絡機関である「篤志解剖全国連合会」副会長。癌等の手術でQuality of Life (QOL)を配慮した機能温存の必要性が高まってきた現在、外科医の要請に対応した臨床解剖学研究にも力を注いでいる。医学博士。
1993年2月号掲載
臓器提供より理解が得にくい「献体」
──現在は「献体」ということで、自分の意志で医学に貢献できる。これはすばらしいですね。現在、どのくらいの登録者がいらっしゃるのですか。
佐藤 私どもの学校では、登録者が約2,500人くらいいらっしゃいます。年間だいたい60〜70体、すなわち約3%の方が亡くなって献体されます。
──ー解剖の献体というのは、臓器提供に比べ、勇気がいることですよね。
佐藤 ええ。臓器提供の場合は、そのおかげで誰かの目が見えるようになるとか、人の命を救えるというように、非常に直接的でドラマチックです。しかし、献体はそれで勉強した学生が、将来人の命を助ける医者になるんだという、間接的な貢献ですからね。また、役に立つ時は本人は亡くなっているわけですしね。
──遺族の問題もありますか。
佐藤 ええ。例えば奥さんやお子さんは故人の遺志を十分に理解してくださって、大学へ電話をかけてきてくださる。それでいざ引き取りにうかがうという段になって、田舎から叔父さんなんかがでてきて「おまえたち、親を何だと思っているんだ」ということでせっかくのご遺志が無になるケースもあります。ですから、献体登録する時には、ご家族、ご兄弟はもちろんのこと、親戚の方の判も必ずもらっておいていただきたいですね。また欧米では、宗教に裏打ちされたボランティア精神というのがかなり強いですから、例えば橋の上で人が亡くなっていて、懐を探って見たら献体登録をしていたという場合、本人の意志を尊重することを考える。日本人は遺族のメンツを考える。こういう違いがあるようです。
──「献体」という言葉がもっと普及してくれば、考え方の上でも欧米との差が無くなってくるでしょうね。献体の登録者が多くなるということは、それだけ医学の発展にも寄与することになるわけですから、日本にもぜひ、欧米の考え方が広まることを期待したいですね。本日はありがとうございました。
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