こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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イギリスの近代都市づくりを進めたのは 実はコレラだったのです。

誤解が生んだ「近代化」−コレラとイギリスの奇妙な関係−

歴史学者 中央大学文学部教授

見市 雅俊 氏

みいち まさとし

見市 雅俊

1946年、東京都生れ。70年東京教育大学文学部卒業。74年一橋大学社会学研究科博士課程中退。京都大学人文科学研究所助手、和歌山大学経済学部助教授を経て、現在、中央大学文学部教授。著書に『コレラの世界史』(94年、晶文社)、『ロンドン─炎が生んだ世界都市』(99年、講談社)、共著に『路地裏の大英帝国』(82年、平凡社)、『青い恐怖・白い街』(90年、平凡社)『記憶のかたち』(99年、柏書房)、『疾病・開発・帝国医療』(近刊、東大出版会)、共訳に『ダウニング街日記』(90年、平凡社)。

2001年8月号掲載


阿片、水銀、瀉血...驚くべき治療法

──当時の治療方法は、阿片や水銀を大量に投与したり、静脈を切断する「瀉血」をしたりと、現代では考えられない方法が採られていますね。特に瀉血は、採血量なんてまったく気にされていない…。考えただけでもぞっとします。

見市 コレラの侵入以前から、西洋医学の世界では、薬であれば大量投与、瀉血であれば大量に血を抜くという傾向が顕著でした。医学史でいう「英雄的治療法」の時代です。コレラの流行は医学界においても非常事態と考えられたために、この傾向に一層拍車が掛けられたのです。

この他にもいろいろな治療方法が編み出され、お陰で病院に入院する人もいなくなったそうです。

──ということは、かなり効果があったと…?

見市 いいえ。効果のある無しに関係なく、患者が病院に行きたがらなかったんです。病院に行けば、「コレラという新しい病気を研究したい」と目を輝かせている医師達のおもちゃにされると思ったのでしょう。せっかく政府が用意したコレラ専門病院も、開店休業状態だったようです。

──その気持ちはとてもよくわかる気がします(笑)。


近著紹介
『コレラの世界史』(晶文社)
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