こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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汚れを防ぎ除菌、消臭、清掃作用も。 「光触媒現象」を大発見、多分野で実用化

汚れない外壁、曇らないガラスのわけは?

東京理科大学学長

藤嶋 昭 氏

ふじしま あきら

藤嶋 昭

1942年東京都生まれ。71年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、工学博士。75年東京大学工学部講師、76〜77年テキサス大学オースチン校博士研究員。78年東京大学工学部助教授、86年同学部教授を経て、95年東京大学大学院工学系研究科教授。2003年(財)神奈川科学技術アカデミー理事長、同年東京大学名誉教授、05年東京大学特別栄誉教授、06年日本化学会会長。10年より現職の東京理科大学学長に就任。著書に、『光触媒のしくみ』(共著・日本実業出版社)、『時代を変えた科学者の名言』(東京書籍)、『光触媒が未来をつくる』(岩波書店)、『理系のための中国古典名言集』(朝日学生新聞社)ほか。

2016年10月号掲載


藤嶋 ありがとうございます。最近は太陽光に限らず、人工的な光のエネルギーでもこの技術が可能になっています。さきほどお話した空気清浄機やエアコンなどもその例です。
でも、私が最初に光触媒現象を発見し1967年に学会で発表した際には「そんなバカなことはありえない」と全く認めてもらえませんでした(笑)。当時は光がエネルギーになるという発想がなかったんですね。

──そこからどうやって、世界でも認められるまでに?

藤嶋 72年に『Nature』に論文が掲載され欧米から注目されたことで、状況が一変しました。74年元旦には、朝日新聞の1面トップ記事にもなりました。ただし、当初は、水を分解するという作用に対してではなく、「水素が取り出せる」ことの方に注目が集まり、エネルギー問題の解決に役立つのではないかと期待されたのです。ちょうど第1次オイルショックが勃発した頃で、太陽光と水で水素エネルギーをつくることができれば、石油の代替エネルギーになると考えられたのです。

指導教官だった本多健一先生(右)との研究の様子(1974年頃撮影)〈写真提供:藤嶋昭氏〉

──なるほど。確かに、その意味で注目されるのも無理はないですね。

藤嶋 そこで実験を重ねたのですが、1m四方の酸化チタンの板を使って最大で1日7ℓの水素を取り出すのが精いっぱいでした。燃やせば一瞬でなくなる量で、これではエネルギー変換効率が悪く実用化が難しい…。

──そこで、酸素が取り出せる作用の方に着目された?

光触媒現象実験の様子。水の中の酸化チタンに光を当てると、水が分解され、酸素と水素が泡となって発生する〈写真提供:藤嶋昭氏〉

藤嶋 はい。エネルギー生成は無理でも、水が分解できる(酸化作用がある)なら環境浄化、環境問題対策に活用できるのではないかと、研究を方向転換しました。


近著紹介
近況報告

藤嶋 昭先生は、2018年に同大学栄誉教授になられました。

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