こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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嘘をつかないのが当たり前の「武士道」。 日本こそ、本当の意味での「契約社会」です。

日本人の心の根底にある「武士道」

国際日本文化研究センター教授

笠谷 和比古 氏

かさや かずひこ

笠谷 和比古

1949年兵庫県生まれ。73年京都大学文学部史学科卒業、75年同大学院文学研究科修士課程修了、78年同大学院文学研究科博士課程単位取得退学。78年国立史料館(国文学研究資料館史料館)助手、文部教官。88年著書『主君「押込」の構造』(平凡社選書)でサントリー学芸賞を受賞。89年国際日本文化研究センター助教授、96年教授に就任し現在に至る。武士道研究の第一人者で、欧米型の個人主義・契約主義が蔓延する現代日本に警鐘を鳴らす歴史学者。著書は『武士道その名誉の掟』(教育出版)、『武士道と日本型能力主義』(新潮選書)など多数。

2015年2月号掲載


外国人からみると、日本は特異で稀有な国

──ところで、先生はご著書の中で、日本は特異な国であり、外国からみると稀有な国である、そして、その背景には「武士道」があると書かれていますね。

笠谷 はい。まずは「明治維新」という大改革を成し遂げた国であり、欧米列強の軍門に下ることなく植民地化されなかった、アジアでは特異な国です。これらは、不屈の武士道精神があったからこそできたことです。
一方、東日本大震災のとき、暴動や略奪を起こすことなく、悲惨な状況にじっと耐え行儀良く並ぶ被災者の姿に、外国人は「稀有な国」だと評しました。海外では到底信じられない光景でしょうが、これも、日本人には自分を律することのできる武士道精神が宿っており、無意識のうちにそうした行動につながったのだと思います。

東日本大震災発生後、雪の中、仙台市立茂庭台小学校で給水の順番を待つ人々。順番無視や略奪などなく、当たり前のように整然と列に並んで配給を待つ忍耐強さは、武士道精神が育んできた日本人の心の象徴か〈写真提供:河北新報社(2011年3月16日掲載)〉

──なるほど。私たちは普段、「武士道」を特別意識することも、学校や家庭で教えられることもありませんが、武士道精神は日本人の中に脈々と受け継がれているんですね。

笠谷 そうですね。もう一つ、海外でも驚きの目でみられた出来事があります。2013年7月、JR「南浦和」駅で、電車とホームの間に挟まれた女性を救出するため、乗客や駅員らが協力して車両を押したという行動です。

JR「南浦和」駅にて、電車とホームの間に挟まれた女性救出のため、車両を押して傾ける乗客や駅員ら。乗客が力を合わせて救助する姿に、「集団で英雄的な 行動を示した」「われわれだったら傍観のみ」など、世界から賞賛の声があがった〈写真提供:読売新聞社(2013年7月22日掲載)〉

──あぁ、覚えています。しかし、あの出来事のどこが? 困っている人を助けるのは、ごく当たり前のことだと思うのですが・・・。


近著紹介
『武士道―侍社会の文化と倫理』(エヌティティ出版)
『真田松代藩の財政改革』(吉川弘文館)
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