こだわりアカデミー
古代の技術や生活を実験したり、実践することで たくさん面白い発見があります。
縄文生活を再現する
原始技術史研究者 和光大学非常勤講師
関根 秀樹 氏
せきね ひでき
1960年福島県生れ。和光大学中退。東北工業大学客員研究員、原始技術史研究所主任研究員を経て、同研究所主幹、和光大学非常勤講師に。同時に、古代楽器・民俗楽器のコンサートを仕掛けたり、各地の美術館や博物館で多彩なワークショップを展開している。主な著書に『民族楽器をつくる』(93年、創和出版)、『縄文生活図鑑』(98年、創和出版)など。
1999年9月号掲載
大学の授業に「古代の火起こし」
──とても興味深い研究ですね。ほかの人はそこまではやらないと思うんですが…。
関根 子供の頃、田舎暮らしをしたことがあって、その時、両親や近所の人達に「これは食べられる草だ」とか「薬になる草だ」とかいろいろ教わりました。でも高度成長を遂げた日本では、もうそういう知識、知恵は生活に必要がなくなってしまい、教わったと言ってもちゃんと受け継いでいない。
──確かに、私はそういうことをよく知っている世代ですが、今では子に伝える機会がないですからね。
関根 また、田舎の村では、大工さん、博労のおじさん、近所の人達など、会う人会う人みんな面白い人ばかり。話を聞いていて飽きないんですよね。でも三歳くらいの時、親の転勤でちょっと大きな街に引っ越したら、そういう面白い人がガクンと減り、五歳でさらに大きい街に引っ越したら二、三十人に一人くらいになってしまった。高校時代には百人に一人くらいになっちゃったんです。都会に行けば行くほど、味がある人が少なくなっていく…。そういう体験がこの研究の根本にあるんですよ。
──よく分ります。都会では芸能界の話はよく知っていても、自然界のワクワクするような話をできる人ってそうそういませんね。
関根 そうなんです。学校でもそういう話は教えてくれず、「いい学校に入る」ための勉強ばかり。そういう受験戦争にも疑問を抱きまして、高校の時なんかは年に五百冊くらい本を読んだり、理科室で実験ばかりしていました。「きっと大学は自分の好きなことができるだろう」と期待をしつつ、変り者の私にぴったりのユニークな大学を探したところ、その代表格の一つ、私が今、教鞭を執っている和光大学が目にとまったんです。初代学長が本に「ここは小さな実験大学。卒業したからといって、何か資格が取れるわけでもないし、いい就職ができるわけではない。でも、学ぶ姿勢とか生き方にきっと道が開かれるだろう」というようなことを書かれていて、それを読んで「私の居場所はここだ」と決めたのです。
──確かに、大学は本来就職斡旋所ではありません。何をどう学ぶかが大切です。それで先生はここで道が開けた…。
関根 そうなんです。古代の火起こしの授業をしていた岩城正夫先生にお会いしたことが、この研究を始めるきっかけとなりました。
岩城先生は机の上で文献のみを使うばかりではなく、「火を起こすにはどの木を、どのくらいの厚さにすればいいのか」など、実験をしながら具体的に調べるというユニークな研究をなさっており、面白くていろいろお手伝いをするようになりました。この「火起こし」の研究を起点に、古代の技術、生活を実践的に研究するようになったんです。
縄文時代の生活様式が詳しく書かれている先生の著書『縄文生活図鑑』(創和出版) |
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