こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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人間よりはるか以前から、農業、牧畜、奴隷制度etc…

人間以上にスゴイ! 昆虫の生態

九州大学総合研究博物館助教

丸山 宗利 氏

まるやま むねとし

丸山  宗利

1974年生まれ 東京都出身。2003年、北海道大学大学院農学研究科博士課程を修了。その後、国立科学博物館、フィールド自然史博物館(アメリカ・シカゴ)研究員を経て、08年より現職。日本一と言われる約400万もの昆虫の標本を管理する傍ら、自ら世界各地を飛び回り、珍しい昆虫を収集。専門分野はアリと共生する昆虫のほか、体長数ミリ、頭に大きな突起がついた昆虫ツノゼミの研究にも力を入れている。著書に『ツノゼミ ありえない虫』(幻冬舎)、『昆虫はすごい』(光文社)、『アリのくらしに大接近』(あかね書房)、『きらめく甲虫』(幻冬舎)など。

2015年8月号掲載


超高速進化で、いまや500万種?!

──先生の著書『昆虫はすごい』を非常に楽しく読ませていただきました。昆虫の面白い生態が多数紹介されていましたが、世の中には本当に多種多様な昆虫がいるのですね。しかもその「種」の多さといったら、われわれ脊椎動物の比じゃないとか…。

丸山 はい、そうなんです。昆虫はわれわれが見ることのできる世界だけでもかなりの種がいますが、地面の下など見えないところにもたくさん存在しています。脊椎動物どころか植物や菌類も含めた、陸上で暮らす生物だけで考えた場合でも、その70〜80%超を昆虫が占めているんです。既知の種だけでも世界で100万種。熱帯雨林など未調査の地域も多々ありますし、博物館の標本の中ですら名前が付いていないものもまだまだいる。実際には最低でも300万〜500万種はいるのではないかといわれています。

──500万種! なぜそんなに種類が多いのですか?

丸山 進化のスピードが速い、また進化しやすいからだといえるでしょう。その大きな要因は、まず「小さいこと」。そして、「飛ぶことができる」ことが考えられます。
体が小さいことで、例えば大きな脊椎動物が暮らせないような小さな穴とか落ち葉の下とか、さまざまな環境に生息することができる。そして、それぞれの環境でそこに適応した種ができていくのです。

──なるほど。その上、飛ぶことができると、いろいろな場所へ行くこともできますね。

丸山 そのとおりです。また、小さいと成長が早いので、世代交代のサイクルが短くなります。人間の場合は少なくとも20年程度はかかりますが、昆虫は通常は1年。熱帯なら数カ月、中には数週間というものもいます。この世代交代の早さにより、進化する種が必然的に増えるというわけです。

──種が多いと、中には面白い特徴を持つ昆虫もたくさん出てくるということですね。面白い特徴といえば、ご著書でも紹介されていた植物や他の昆虫を真似るような「擬態」も興味深い生態ですが、それも進化の一つなんですか?

 
丸山 はい。ご存知のように進化とは、突然変異がもとで環境に適応することにより、新しい種が生まれることです。擬態も無数の突然変異の結果、生き残った生態です。葉っぱそのものに見せかけるコノハムシの擬態では、かじった痕まであったりします。おそらくそういう風に見せかけることで天敵に襲われずに済んだコノハムシたちだけが生き残ってきた、ということなんでしょうね。


近著紹介
『昆虫はすごい』(光文社)
『きらめく甲虫』(写真集・幻冬舎)
『アリの巣のお客さん』(子供向け写真絵本・あかね書房)
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