こだわりアカデミー

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本対談記事は、アットホーム(株)が全国の加盟不動産会社に向け発行している機関紙「at home time」に毎号掲載の同名コーナーの中から抜粋して公開しています。宇宙科学から遺伝子学、生物学、哲学、心理学、歴史学、文学、果ては環境問題 etc.まで、さまざまな学術分野の第一人者が語る最先端トピックや研究裏話あれこれ・・・。お忙しい毎日とは思いますが、たまにはお仕事・勉学を離れ、この「こだわりアカデミー」にお立ち寄り下さい。インタビュアーはアットホーム社長・松村文衞。1990年から毎月1回のペースでインタビューを続けています。
聞き手:アットホーム株式会社 代表取締役 松村文衞
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「働かないアリ」がいるからこそ、 アリの社会は長く存続できるのです。

社会の維持に不可欠な「働かないアリ」の存在

北海道大学大学院農学研究員准教授

長谷川 英祐 氏

はせがわ えいすけ

長谷川 英祐

1961年東京都生まれ。大学卒業後民間企業勤務の後、東京都立大学(現・首都大学東京)大学院で生態学を学ぶ。現在、北海道大学大学院農学研究院生物生態・体系学分野准教授。観察、理論解析とDNA解析を駆使して、主に真社会性生物の進化生物学研究を行っている。実験から得た「働かないアリだけで集団をつくると、やがて働くものが現れる」などの研究で話題を呼んだ。著書は、『働かないアリに意義がある』(メディアファクトリー新書)など。

2013年3月号掲載


数多くいる生物の中から「アリ」の生態に引かれ・・・


──先生のご著書『働かないアリに意義がある』を大変興味深く拝読いたしました。アリやハチが、分業的な階層を持ち、集団で生活する「社会性」昆虫であることは知っていましたが、まだまだ知らないことも多く、驚きの連続でした。
アリやハチは、現在「真社会性生物」と呼ばれているそうですが、「社会性」とはどこが違うんですか?

長谷川 「真社会性」とは、集団の中に個体間の繁殖の偏りが存在していることを言います。
例えば、サルは群れを作って「ボス」「見張り役」といった順位制に基づき生活しています。これも「社会」といえますが、サルはどの個体も子を産みます。それに対し、アリやハチは「女王」のみが繁殖をし、その他の個体は巣のために必要な作業を行います。こうした仕組みを備えているものを、学術的には「真社会性生物」と呼んでいるのです。
ちなみに、アブラムシの一部や、哺乳類ではハダカデバネズミも真社会性生物と定義されています。

──なるほど。「社会性」と「真社会性」との大きな違いは、繁殖に関わる分業が確立されているということですね。
ところで、地球上には多種多様な生物が存在しますが、先生はなぜ真社会性生物を研究対象に選ばれたのですか?


長谷川 もともと、子どものころから生き物の動きを見るのが好きだったんですが、アリに興味を持ったのは、大学2年生くらいの時。イギリスの動物行動学者リチャード・ドーキンスの著書『利己的な遺伝子』を読んだことがきっかけでした。
働きアリは子を産まず、兄弟の子育てを手伝うという「利他」の精神で、自分と同じ遺伝子を後世に残そうとする。それは結果として「利己」的な行動なのだと。ここが非常に面白いと感じ、アリの生態について研究するようになったんです。

──確かに、面白い話ですね。遺伝子によって後世に自己を残そうとする行動は、真社会性生物にも見られるんですね。それに、あんなに小さなアリがどうやって社会を維持しているのか、私もとても興味があります。

 

アリの世界に存在する「反応閾値(いきち)」とは?


──そういえば、先生のご研究で、コロニー(巣)の働きアリの中には、まったく働かないアリがいることが分かったそうですね。働きアリは全員がずっと働いているものだと思っていました。


近著紹介
『働かないアリに意義がある』(メディアファクトリー新書)
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